未来では「面倒くさいこと」が贅沢な体験になる/進む「自動化」について
ここ「不便」だから全部自分の手でやれるじゃないですか
それが何だか嬉しいんです
もしすべてが自動化されたら、あなたはそれに身を委ねるだろうか?
それとも、自分の手でつくる「何か」に心を傾けるだろうか?
面倒なことが、嫌いだ。
でも、生活の中であえて「面倒くさい」を楽しむこともある。
好きなものに対しては、面倒くさいことを楽しむ。
具体的には、コーヒーを淹れる手間と時間を楽しんだり、
靴や財布などの革製品を手入れする手間と時間を楽しんだり。
身近な家電製品から自家用車、買い物に至るまで、「自動化」が進む現代。
未来では、さらに多くのことが自動化されるだろう。
それに対し減っていくのは、
「自分の手でやれること」。
”マニュアル操作”で行うことは、どんどん少なくなっていく。
便利になると思える一方、こう考えることもできる。
未来では、「面倒くさいこと」が贅沢な体験になる。
自動化は、留まることをしらない
「自動化」について考えてみる。
<これまでの流れ>
・すべて、人の手で行う →
・工程の一部を機械で、一部を人の手で行う →
・すべて、機械で行う
掃除に関していうと、流れはこう。
ホウキ → 掃除機 → ルンバ
高度経済成長期、昔はその殆どを人の手で行っていた家事は、
家電により自動化された。
家電以外にも、自家用車や、小売店のレジなど。
自動化は、留まることを知らない。
自動化は、思考にまで及ぶ
物理的なものだけが、自動化の対象ではない。
精神的なもの、「思考」についても、その対象だ。
例えば、
・「どの服を着ようか?」
・「何の曲を聴こうか?」
・「晩ごはんは、何を食べようか?」
これらを、サジェスト(提案)してくれるサービスは、
すでに多く提供されている。
「自動化」について考えるとき、いつも思い出す映画がある。
『ウォーリー(WALL-E)』だ。
私は生き残りたいんじゃない、生きたいんだ!
映画「ウォーリー」のシーン。生活に必要なことの全てをロボットに依存する人間たち。
動画は3分半。この3分半は、世界で最も短い類のドキュメンタリーといえる。
2008年のピクサー/ディズニーの映画『ウォーリー(WALL-E)』。
公式サイトから作品紹介を引用する。
29世紀の地球。700年もの間、たった独りでゴミ処理を続けているロボット【ウォーリー】。彼の夢は、いつか誰かと、手をつなぐこと。ある日、そんなウォーリーの前に、真っ白に輝くロボット【イヴ】が現れる。一目惚れしてしまったウォーリーが、イヴに大切な宝物“植物”を見せると、思いがけない事態が!イヴはそれを体内に取り込み、宇宙船に回収されてしまう。イヴを失いたくない!必死に宇宙船にしがみついたウォーリーは、大気圏外へ飛び出して…。宇宙の遥か彼方でウォーリーを待ち受けていたのは、地球の未来が懸かった壮大な冒険だった!
純粋にただ大切な相手を“愛する”ことの素晴らしさを教えてくれる、ディズニー/ピクサーが贈る“29世紀のラブストーリー”。
上の動画にもあるように、作中の巨大宇宙船アクシオムの中では、
人間は生きるために必要なこと全てを「機械」に任せている。
巨大宇宙船の乗客たちは、考える必要も、働く必要もない。
考えることも、働くことも、すべて「機械」がやってくれる。
この映画は、
AI(人工知能)とBI(ベーシックインカム)がもたらす未来を示唆している。
そう捉えることもできる。
自動化が極限まで進むことで、あり得るかも知れない未来。
これは何とも、おそろしい。
この作品がスゴいのは、
最高のエンターテイメント作品であり、
同時に、風刺の効いたディストピア作品であること
だと思う。
10年以上前の映画だが、この作品は自動化が急速に進んでいる今こそ、
改めて見たい作品のひとつといえるだろう。
ちなみに、ディズニーの公式サイトでは多くの作品から「キャラクターの一覧」を見ることができるが、
ウォーリーの主要キャラクター(ウォーリーやイヴ)を見つけることはできない。
(近い時期、2006年の映画「カーズ」からマックイーンは見つかるのに)
風刺が効いている映画とはいえ、この映画が意図的に「隠されて」いるとしたら、ちょっと怖い。
なお、「作品一覧」から映画ウォーリーを見つけることはできる。
ありうる未来について
映画で描かれる未来は、行き過ぎかも知れない。
「自分の手で、できること」の自動化を進めるのは、もう止められない。
AIとBIが社会に浸透し、
「考えることも、働くことも、しなくていい」世界が出来上がったら、
僕たちはどのように生きていけばよいのだろう。
「自分の手で何かをすること」が、
「自動化に身を任せること」よりも贅沢な体験になる。
そんな未来がくる気がしてこないだろうか。
暗い未来が頭をもたげそうになるけれど、
いまはただ心を傾けられることを大切にして、
積み上げていきたいと思う。
<引用>
「私は生き残り…」/B.マックリー(映画「ウォーリー」)