【日本映画】松本清張『疑惑』にみる対比とメッセージ性

 

燃えろ女の野望、

悪の限り

 

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『Amazon Prime Video(プライム・ビデオ)』。

基本的にはアニメを観ているんだけど、たまに、日本映画を観る。

それも、古い映画。

これまで観た中で特に面白かったのが

 

・羅生門(1950)

・ゴジラ(1954、初代)

・犬神家の一族(1976、映画化2番目)

なんだけど、今回挙げたいのはこちら。

 

『疑惑』 原作/松本清張

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観る前:

「ま、大女優2人が出演の評価良さげな映画だからとりあえず観とこ」 

 

 

観た後:

「最高…!

 

※本記事はネタバレを含みます。

 

<あらすじ>

富山新港湾の岸壁で、鬼塚球磨子(くまこ)と夫・白河福太郎の乗った車が、時速40キロのスピードで海へ突っ込み、夫が死亡する事件が起こった。球磨子は車から脱出し助かっていたが、保険金殺人と疑われ警察に逮捕される。新聞記者の秋谷茂一は、球磨子の過去の新宿でのホステス時代、暴力団員とつるんで詐欺・恐喝・傷害事件を起こし、北陸の資産家である福太郎と結婚後はすぐ、夫に巨額の生命保険をかけた…を詳細に報じた上で、球磨子を「北陸一の毒婦」と糾弾する記事を書いた。秋谷の記事を契機に他のマスコミも追随、日本中が球磨子の犯行を疑わないムードになった。球磨子の弁護人も辞退が続出する中、佐原卓吉(映画・ドラマでは佐原律子)が弁護人となる。球磨子の犯行を確信する秋谷は、佐原に状況を覆す力はないと高をくくっていた。

 

あらすじを役名すら略して究極に短くすると、

「保険金殺人の疑いをかけられた桃井かおりが、岩下志麻に弁護される」

というもの。

 

 

主要キャスト

 

白河(鬼塚)球磨子(演 - 桃井かおり)

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恐喝・傷害などで前科四犯の悪名高い女。福太郎の3億円にも上る保険金の受取人となっている。弁護士はいるが、作中では保険金殺人で死刑判決もあり得ると知り、自身も六法全書を読んだ上で裁判に臨んでいる。子供の頃に養子に出されたり、ホステスとして働いたり、クラブ経営や福太郎に会う前に離婚歴などもあり波乱に満ちた人生を送る。 

 

佐原律子(演 - 岩下志麻)

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国選弁護人として球磨子の裁判を弁護する。本来民事裁判専門だが、弁護士として有能。裁判中も感情的な言動をする球磨子にも凛とした態度で対応する。証言者たちには、緩急をつけた話し方で証言の矛盾点を探る。離婚経験があり、娘のあやこと月に一度会うことを楽しみにしている。

  

 

主要キャスト、以上。

 

そう言いたくなるくらいこの2人の存在感が強い。

ちなみに、他のキャストの一例を出すと

 

柄本明さん(秋谷茂一 役)とか、

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鹿賀丈史さん(豊崎勝雄 役)とか、

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小林稔侍さん、丹波哲郎さん、山田五十鈴さんなど…

主役級の大物ばかり。

 

「対比」と「メッセージ性」

この映画の見どころはこの2点に集約されていると思う。

ひとつは、対比。

もうひとつは、メッセージ性。

  

主要2名の「対比」

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映画ラスト6分のシーンのひとつから。

Fire TVでのサムネにも使われてるこの画像、

映画を観た後だからこそ理解できる「対比」がこの中に収まっている。

 

純白のスーツにワインを浴びせかけ、薄ら笑いを浮かべる球磨子(桃井かおり)。そしてそれに動じず、眉ひとつ動かさない佐原(岩下志麻)。考えるよりも先に手が、口が、感情が先に出る球磨子。作中では感情を極力排除して、論理的に振る舞う佐原。

その他、劇中ではこの2人の対比する点がいくつも描かれる。

ただし、ラストの2人のシーンだけは「二人とも、同じかも知れない」と思わせる演出があるところも良い。

 

メッセージ性

この映画の強烈なメッセージは

「メディア・世間による決め付けと先入観の恐ろしさ」

にあると思う。

 

何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される

  

狭義では刑事裁判における立証責任の所在を示す原則であり、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条など)。

 推定無罪 - Wikipedia

 

完全なネタバレだけど、 球磨子は無罪を勝ち取る。

それもトリックだとかケチくさいものではなくて、事実としての、無罪。

しかし裁判では「無罪」になったが、実質として本当に「無罪」なのか?

 

原作・映画ともにタイトルは「疑惑」

 

時間があるときにもう1回観たい!

そう思わせる映画だった。

 

本日はここまで。