人材派遣会社の営業職は「○○○をし続ける仕事」である
以前、人材派遣会社の営業職として働いたことのある経験から
その職業を選ぼうとしている人に伝えておきたいことは
「やめておきなさい」だ。
ただし、例外アリ。
結論からいうと
「鈍感な人」であれば、
決してお勧めはできないが、
職業のひとつとして選択してもよいと思う。
これはどういうことか。
派遣会社の営業職に最も必要なのは
専門的なスキルではなく「耐える」ことだから。
何に耐えるのか?
「日々発生する、自分ではコントロールできないこと」だ。
こういうことを言うと、
「会社組織に属する以上、コントロールできないことが発生するのは当然ではないか?」
と思う人もいるだろう。
しかし、派遣会社の営業職で厄介なのは
・コントロールできないこと = 大抵がトラブルの発生
・しかも、そのトラブルが、頻繁に起こる
ことなのだ。
トラブルが発生する度に神経をすり減らしていては、とても身体がもたない。
だから、トラブルが発生しても、
動じず、淡々と対処していく必要がある。
メンタルを安定させるために必要な考え方のひとつだが、
特にその考え方が必要になるのだ。
どのようなトラブルも、鈍感力で対処していく。
それが派遣会社の営業職に必要なスキルだ。
本エントリでは、人材派遣会社の営業職として求められる人材について
割と言葉を選ばずに言及していく。
トラブル① 「派遣社員が急にいなくなる」
このトラブルは非常に多く発生する。
そして、その対処として下記を「淡々と」こなすことが求められる。
・派遣先に速やかに謝罪する
・派遣社員に連絡を試み、もし連絡が取れなかったら自宅を訪問する
・派遣社員から事情を聞き取り、例えその事情が理解しがたいものであっても、再度その派遣社員を元の派遣先、または他の派遣先に派遣する
ちなみに派遣社員が急にいなくなることを業界ではよく「飛ぶ」と表現している。
よく飛ばれるタイミングは、企業への見学当日、派遣初日、派遣してから数日後など。
マジでよく飛ぶ。しかも予測できない。
いくら真面目そう・誠実そうだと思っていた人でも、飛ばれることはしょっちゅう。
一方、明らかに不真面目そうな人が意外にも長く続いちゃうことがある。
予測は難しい。
理由は、派遣会社と派遣社員がお互いに信頼し合うことができるまでに
必要な対話が不足しているからだ。
お互いを知る、ということに多くの時間が割かれない。
派遣会社には日々多くの求職者が登録に訪れるが、登録から派遣先企業に派遣するまでに取れるコミュニケーションの密度には限界がある。
登録の当日に派遣先の企業を提案し、翌日中には見学が行われる、なんてザラだ。
全ての利害関係者が、結果を急ぎすぎている。
各々の考えは、次のとおりだ。
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派遣社員(求職者)
「なんでもいいから早く働いて、お金が欲しい」
(ただし、合わない仕事ならすぐにやめる)
派遣元の企業
「誰でもいいから派遣先に依頼された募集枠を埋めたい」
(ただし、選考に多くの時間を使いたくない)
派遣先の企業
「とにかく早く人が欲しい」
(加えて、スキルの高い人がいい)
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「じっくり考える」という選択肢はない。
それぞれが、自分のことしか考えていない。
だからトラブルが発生する。
いまどき、複数回の試験や面接で雇った正社員でさえ、採用する前の段階でその人の多くを理解することは難しい。
コミュニケーションの時間を多く取れない派遣社員ならなおさらだ。
トラブル② 派遣社員からのクレーム
このトラブルは、派遣初日または日が浅いタイミングで発生する。
派遣社員は「聞いていた仕事内容と違う」と訴える。
このトラブルが発生する要因は、主に次のような場合だ。
・営業担当者から求職者への説明が不足している
・派遣元から営業担当社への説明が不足している
このトラブルの要因は正直、営業担当者の説明不足が多いのも事実だ。
トラブル③ 派遣先の企業からのクレーム
「派遣社員のスキルが不足している」との問い合わせ。
これもよくあるトラブルだ。
典型的なイメージとしては
「お宅のスタッフ全然使えない! 代わりの奴を寄こしてくれ!」
みたいな。
僕が勤めていたときは幸いなことに、
派遣元の担当者さんが優しい場合が多かった。
「派遣して頂いている○○さんなんですが…ちょっと難しいかも知れません」
といったように、あくまでも対等なスタンスで接してくれた。
とはいえ、スキルが不足していることが客観的な事実であれば
派遣社員に働きかけ、他の派遣先への配置転換を試みることになる。
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以上、よくあるトラブル3つ。
細かいトラブルは挙げはじめればキリがないが、機会があれば
「派遣会社あるある」としてまとめたいと思う。
会社組織に属する以上
「自分ではコントロールできないこと」が発生するのは避けられない。
とはいえ、人材派遣会社の営業職に関しては特にその傾向が強い。
最後に、本エントリのタイトルとなっていることについて
お話する。
それを続けることに、平気でいられるか?
言葉を選ばずに言うと、派遣会社の営業職とは
「不良品を出荷し続ける仕事」である。
この発言だけを見ると、
「人を不良品扱いするなんて!」と思われてしまうかも知れないが、
そういった感情については、一旦排除して、
事実について、考えてみよう。
まず
「派遣会社の商品は、人である」というのは、
一部正しく、一部正しくない。
正しくは
「派遣会社の商品は、労働力である」だ。
「派遣社員が急にいなくなる」トラブルに関しても、
「派遣社員が不良品」なわけでは、断じてない。
「派遣先に労働力を提供するにあたって、どのようなプロセスを経たのか?」
については、よく振り返らなくてはいけない。
・派遣社員とコミュニケーションを取れていたか?
・派遣先の担当者とコミュニケーションを取れていたか?
商品(労働力)が不具合を起こすことの原因が、
派遣社員のみにあると考えてはいけない。
求職者と面談して、派遣することにGOを出すのは
派遣先ではなく派遣元(派遣会社)だからだ。
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以上、派遣会社の営業職について、
本当に大雑把ではあるがお伝えした。
本文では派遣会社の説明不足について述べた箇所があったが、
もちろん、中には正当な理由なく、
自分だけの都合で急にいなくなる派遣社員もいる。
繰り返しになるが、トラブルが起こる根本的な問題が
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全ての利害関係者が、結果を急ぎすぎている
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ことにあることは、ほぼ間違いのないものと考える。
それぞれが目先の利益を得ること「だけ」を最優先にしてしまっているため、
結果的に、コストだけが膨らんでしまうのが派遣業界だと思う。
誰も得してない状態が起こりやすい。
派遣会社の営業職をお勧めしない大きな理由として、
「問い合わせに追われる」点も話そうと思ったが、
それはまた機会があれば話したいと思う。