マヌルネコちゃんをさがしに

情報の洪水のなかで立ち止まれ

Netflix『フリント・タウン』に見る「今そこにある現実」【アメリカ発、圧倒的な警察ドキュメンタリー】

 

何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される

 

”顔”が見える、ドキュメンタリー。

 

f:id:popyon:20190824154745j:plain

 

Netflixのドキュメンタリー番組をよく見る。

以前に記事にした『クィア・アイ』以外にも、

Netflixでは良質なドキュメンタリーが多く配信されている。

元気になりたいなら『クィア・アイ』がおすすめ。

 

近ごろ見ているドキュメンタリーは

『フリント・タウン(FLINT TOWN)』。

警察をテーマにした作品だ。

 

<概要>

様々な問題を抱え混沌とした状況にあるミシガン州フリント。市民の不満は高まり一触即発の状態にあるこの町で、日々奮闘する警官の姿を2年以上にわたり追った。


トレイラーはこちら。

トレイラーは、Netflix公式サイトからなら、英語の字幕表示ができる。

もちろん、番組の本編は日本語字幕表示ができる。

 

「顔」が見えるドキュメンタリー

 

「警察」を題材にしたドキュメンタリーについて、何を思い浮かべるだろうか。

犯罪の現場に向かう警察官や、未解決事件の謎に迫る警察組織。

人によっては、「警察24時」と呼ばれるような、

日本の警察の活動を取材したドキュメンタリー番組を

想像するかも知れない。

 

『フリント・タウン』はきっと、いま挙げた、

どのイメージとも異なったドキュメンタリーだ。

 

そこにある「現実」と、警察官たちの「顔」。

それらが、これまでの警察ドキュメンタリーよりも、より近くに感じられる。

そんな映像だと思った。

 

下手な警察ドラマは見れなくなる

 

警察官たちの「顔」がよく見える、という点は、

この方が的確に表現していた。

 

 

本当にそう思う。

日本の「警察24時」でよく見られるような、

(一見して)過激な犯罪現場のシーンは、実はそう多くない。

強くメッセージとして発せられることは、別にある。

 

フリントという地域、またはアメリカ全体での社会の課題に対する、

警察官たちの葛藤や苦悩。そして彼らと、市民たちの言葉だ。

 

これらが、美麗な映像と組み合わさる。

過酷な職務と対比するように。

 

あまりにも映えすぎていて、

ドキュメンタリーでありながら、虚構にも勝るドラマを見ているような

そんな感覚になる。

 

もし『フリント・タウン』の一部シーンを切り取って

何も知らない人に見せたら、「警察ドラマか、映画か」と思うのではないか。

そう思うほどだ。

 

「警察」だけにスポットを当てない

 

警察のドキュメンタリー作品ではどうしても、

「警察」側だけにスポットが当たりやすい。

『フリント・タウン』では、警察だけでなく、

市民側にもスポットが当たるように工夫されている。

3つめのエピソード「犯罪阻止の切り札」では、

フリント警察の厳しい職務質問等に対する

不満をあらわにする市民もクローズアップされる。

 

「警察官を見かけたら 逃げ出したくなる 悪い事をしていなくてもね」

「警察官は決して公正じゃない」

「テレビでもネットでも横暴ばかりが目立つ 信用なんてできるわけがない」

 

彼らの言葉もまた、警察官たちと同じように、

強いメッセージ性を含む「顔」と共に

多くの人の心をうつ。

 

そこにある「現実」

2016年7月7日。

点呼時のミーティングにて、ある事件についての議題が上がる。

昨日、7月6日にミネソタで起きた銃撃事件についてだ。

 

 

テールライトが壊れているという理由で警察に呼び止められた男性カスティールさんは、命令に従い車を停める。

そして「自分は銃を持つ許可を受けており、今も銃を携帯している」と警官に告げた。

その上で、免許証を取ろうと手を伸ばしたところで、警官に撃たれたという。

 

※過激な描写が含まれる動画のため、プレビューなしのリンクのみ。

Officer Yanez' squad car video, side-by-side with Diamond Reynolds' Facebook video - YouTube

 

動画に対する警察官たちの考えは様々だ。

 

「一方的な主張だ 全容が分かるまで何ヶ月もかかる」

「20年の経験から言わせてもらえば(発泡した)警察官は興奮状態にあるように見える こんな結果は望んでいなかっただろう」

「撃つ前にいろいろあったはずだが 映像は一部しか見せない」

「警察官の中には正当な理由なく 暴力を用いる奴もいる。危険を感じたからというだけでは正当な理由にならない。本当に発泡が必要なのか慎重に考えるべきだ」

 

ここでも、警察と市民それぞれにスポットを当てたときと同様、

「発泡の正当性を信じる者」と

「それに懐疑的な者」の対比を見ることができる。

  

そして2016年7月8日。

4つめのエピソード「死と殺人におびえて」では、

今度はダラスで起きた銃撃事件について、打ち合わせで話題となる。

 

 

フリント警察の武装も強化され、

警察官は職務に恐怖を感じはじめ、

市民もまた同様に不安を持つ…

 

…と、こういった形で密着は進んでいく。

 

 「ドキュメンタリー」のあるべき姿

 

ニュースで見聞きしたことのある事象でも、

ドキュメンタリーとして複数の視点から緻密に描かれると、

より理解がしやすくなる。

それに、自分の持っていた価値観に対して

「再考すべきかも知れない」と、気づきを与えてくれる。

 

決して視聴者に「意見」を強制することなく、

自身で考えるように促す。

 

これが、ドキュメンタリーのあるべき姿だと思う。

 

そういった点で、『フリント・タウン』は、

本当に価値のあるドキュメンタリーだ。

 

おわりに

 

最後に、ダラスの銃撃事件についての、

ラジオ司会者・政治家のダン・パトリックの言葉を引用する。

 

SNSで警察への憎しみを煽る人たちに言いたい

犯罪者でなくとも

あなたたちの言動が

昨夜のような悲劇を生むのです

 

 

本日はここまで。

 

 

<引用>

「何人も…」(推定無罪の原則)